the industrial

都内で働くITエンジニアの日記

心優しき巨人、ダイダラのボッチ

昔々、あるところに小さな村があった。

村の外れの流れが速い河のそばで、ダイダラのボッチという体がとても大きな青年が暮らしておった。

その風貌から村人にも恐れられていたため、いつも一人で暮らしていたダイダラのボッチだったが、別にさみしさは感じなかった。

人間の友達こそ居ないものの、豊かな森と河からとれる魚があるので、食べるものには困らない。

ダイダラのボッチは、ずっとそうして暮らしていけばいいと思っていた。



ある時、河の流れる音に交じり、「助けてー!」という声が聞こえた。

見ると、女の子がおぼれているではないか。

いくら体が大きいとはいえ、流れの速い河から人を担いで岸に上がるのは危険であったが、ダイラダのボッチはすかさず河に飛び込み、なんとか命からがら女の子を助けた。

 「おじさん、ありがとう。アタイはオハナって言うの。お魚を見ていたら足を滑らせちゃって。あら?あなた、もしかして河太郎ね!」

 「カ、カワタロウ?オ、オデ、ノ名前、ダイダラノボッチ。」

 「違うの?おっとうとおっかあが、河の近くに住む河太郎は、人間を取って喰うから近づいては行けないって言われているの。でも、助けてくれたし大丈夫そうね。アタイ、そんな鬼の様な人がいるわけないって思ってたんだ。やっぱりそうね!」

 「オ、オデ、言葉、上手クナイ。ゴメン。」

 「ううん、いいの。アタイ、口から生まれたんじゃないかって、いつもからかわれるのよ!あ、行けない!もう行かなくちゃ!ありがとうね!河太郎!」

 「オ、オデ、ノ、名前、ダイダラノボッチ...。」

その後もオハナは両親に隠れて、頻繁にダイダラのボッチのところへ遊びに来てくれた。

 「ねえ、河太郎はなんで一人で暮らしているの?おっとうは?おっかあは?」

 「オ、オデ、ノ、名前、ダイダラノボッチ。オットウハ、イツモソバニイル。オッカアハ、河デ、イッタ、ドコカ。」

 「んー、よくわからないけど、船で旅をしているのね!早く帰ってくると良いね!」

 「ウ、ウン。オ、オデ、言葉、上手クナイ。ゴメン。」

幼くして両親を亡くしてからというもの、会話したことが無かったダイダラのボッチであったが、オハナとのおしゃべりが何よりの楽しみになったそうな。

そんな幸せな出来事もつかの間。

ある日、最近オハナの様子を変に思い、父親がオハナにこっそり付いてきた。

 「お前は河太郎だな!うちの娘をたぶらかすのはやめてくれ!もう二度とうちの娘には会うな!」

 「おっとう!違うの!河太郎は河でおぼれたアタイを助けてくれたの!悪い人じゃないよ!」

 「何?それは本当か?」

それ以来、村人にうわさが広まり、ダイダラのボッチの元へは沢山の村人が遊びに来るようになったそうな。

 「河太郎!お前、両親はどうしたんだい?」

 「オ、オデノ、オットウ、、、」

 「おっとう!河太郎の両親はね、船に乗って旅をしているそうよ!」

 「そうかい?そんな人の話は聞いたことねえんだがなあ...」

 「おい河太郎!大工仕事手伝ってくれねえか!」

 「オ、オデ、ノ、名前、ダイダラノボッチ。オ、オデ、オ仕事、ガンバル。」

体の大きなダイダラのボッチにかかれば、村人が苦労する木材の運搬はつまようじを片づけるがごとくたやすいことだった。

村人の手伝いをして感謝されることに、今までに無い楽しさを感じていたダイダラのボッチは、今では温かい村人に囲まれ、とても幸せに暮らしていた。




ある年の雨季の出来事じゃった。

例年にも増して長く降り続いた雨は、河の水を増水させ、ついには氾濫。

村が河に飲みこまれそうになった。

「みんな逃げろー!早く山に登るんだ!」

村人全員、何とか山の上に避難したが、ダイダラのボッチの姿だけは見当たらない。

しかし、量を増す河の水が村を飲み込むのは時間の問題だった。

そして、村人たちはそれをただただ黙って見ているしかなかった。

 「ちくしょうー。ううっ。せっかく河太郎に手伝ってもらって作ったオラの家。うっうっ。」

その時だれかが叫んだ。

 「山だ!山がうごいちょる!」

    「河太郎か!?あれ河太郎でねえか!?」

増水した河の水を塞き止めるべく、大きな大きなダイダラのボッチがせっせと動いては、土を盛って水を塞き止めようとしているではないか。

 「河太郎ー!河太郎ー!」

 「オ、オハナ、ココ、来チャ、ダメ。山、逃ニゲル。」

 「河太郎!早く!河太郎も一緒に逃げようよ!」

 山の上の村人もそれに気づいた。

 「お、おい!アレをみろ!オハナだ!」

 「本当だ!おーい!オハナ!早くこっちに来い!危ないぞ!」

しかし、水かさは増し、いよいよ村を飲み込もうとしていた。

そのとき、ダイダラのボッチが叫んだ。

 「オ、オハナ、ニゲル。オデガ、ココデ塞キ止メ無イト、村、無クナル。ズット一人ダッタ、オデニ、優シク、シテクレタ、皆ノ、村。無クナル、オデ、悲シイ。」

 「でも、河太郎が一緒じゃなきゃいやだ!」

 「オ、オデ、河太郎。頑張ル。ミンナト、楽シク暮クラセテ、ヨカッタ。オハナトノ、話、楽シカッタ。初メテノ、友達、嬉シカッタ。コレカラモ、皆ノ、ソバデ、居ル。」

 「本当?約束だからね!」

そういうと、オハナは泣きながら走って山に逃げた。

それを見たダイダラのボッチは、安心したかの様な笑顔を見せた。

そして、ダイダラのボッチの体が光り、大きく大きくなっていくではないか。



気付くと雨は止んでいた。

しかし、ダイダラのボッチの姿は見えない。

代わりに、村と河との間に大きな小高い丘があるではないか。

 「あんべまー、河太郎のやつ、山神様のせがれだったんだべか。」

こうして、村は小高い山のおかげで、それ以降河の氾濫におびえる事なく、村人はずっとずっとダイダラのボッチに見守られるように幸せに暮らしたとさ。



これが、毎週土曜日に我が家に現れる、「オ、オデ、オ掃除、頑張ル」でおなじみの、心やさしき巨人「おみ太朗」のモデルであった。

っていう、妄想昔話(笑)